2009年12月9日水曜日

第3章―ポルターガイストの出現―6―謎のムービー(飛び出す引出し):part2

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 そのムービーに映された人面には、何らかのはっきりとした意志があるように思われました。開かれた右目には、ちゃんと白目と黒目の区別があり、その眼には、見る者に対する怨恨のような表情がこめられていたからです。

 ぐしゃりとへし潰され、左右へと広がった分厚い唇の左端からは、ヨダレのような液体が垂れていました。

 誰が、一体、何の目的でこんな粘土状の気色悪い顔を作り、それをわざわざ私のデジカメのムービーに3秒間だけ撮影したのか。

 私は母を起こして、このムービーのことをすぐさま言いました。母は、その画面を見て、気持ちが悪いと顔をしかめました。私たち3人は、そのムービーを何回か再生しました。

 最初、私は、撮影されている床は、自分の家の床だと思っていました。その粘土状の顔が貼りついている壁も、てっきり我が家のどこかの壁と思っていたのです。

 ですが、壁の様子からみると、どうも茶色の板でできている様子なので、これは我が家のどこかではない、と分かりました。

 そのうち、ユタカが気がつきました。

 「あっ!この床板、うちのじゃない。よく見て!一枚の床板の幅や模様が全然違うじゃない。どこかよその家の床だよ。どこかの家で撮影したんだよ!」

 息子にそう指摘されて、私たちは、再度、用心深く、ムービーを再生しました。

 まず、どこかの家の床が映りますが、その床は明らかに我が家のフローリングとは異なり、どこかの民家の古い床だと分かりました。

 床板の幅は我が家のものより広く、色はすすけた濃い茶色、そして我が家のフローリングの床のような木目調のデザインは何もないのです。

 そして、壁へと連なる隅は、黒っぽい、ひどい汚れが付着していました。

 「うちの床はいつもピカピカじゃないけどさ、こーんなに汚れた所は、ないでしょ?これ、よその家だよね」

 私がこう言うと、息子も同意しました。

 「うん。これ、うちのじゃないよ。全然違う」

 次にカメラは、壁の謎めいた粘土状の人面をとらえていました。息子は、最後がまた変だ、と言いました。

 「ね、よく見ててよ。最後、ムービーが止まる瞬間、人の指が右上にさっと映るから。ほらっ!この黒い影、ね?分かるでしょ?これを撮影した人が、ムービー止めようと、ストップのボタンを押す時、その指が映ってしまったみたいじゃん」

 私は、2度ほど再生し、床が我が家とは違うこと、そして誰かの指の黒い影が画面右上にサッと映るのを確認しました。

 たった3秒の間に、これだけの奇妙な場面が撮影されていたのです。

 デジカメは、オフにして私の枕元にあったというのに、私がその場を離れた数分間で、息子や母が、夜中の4時近く、別の家で奇妙な映像を撮影できるはずがありません。

 カメラの視点は、まず薄汚れた床から始まりますが、その床も、暗闇の薄明りの中で撮られていました。

 そして、3秒というほんの短い時間の中で、一番の撮影の焦点は、1.5秒ほど映っている、壁に貼り付けられた粘土状の人面であることは明らかでした。最後にその撮影をストップしようと、「誰か」の指が(多分、人差し指が)右上にかざすように映っていた―

 その指は、デジカメの裏面のカメラレンズに触れたから、映ったのです。

 しかし、家族の誰も、こんな「我が家以外の場所」で「夜中に粘土状の人面を撮影する」ことは不可能です。そうなると、私のデジカメを使い、奇妙な異様な映像を撮影した「誰か」は、「人間」ではないことになります。

 私は、枕元にデジカメを置くことが怖くなり、それからは、息子の箪笥の小引出しの中に、「ここにデジカメがあることが分からないように」、ハンカチにくるんで入れることにしました。

 現実にあり得ないことが起きると、いくら大事な物を引き出しなどの中に隠したって、デジカメを勝手に触った「モノ」は、私がデジカメを隠したことも、隠した場所も、きっとどこかから見ているに違いない―

 とにかく、自分の行動のみならず心理までも、「得体の知れないモノ」に常に見張られ、見破られている―

 こんな心境になってしまうのも、無理のないことかも知れません。

 この変な映像は、また父が泊まりに来てくれた時に見せようと、消さずにおきました。また、私は、万が一、父が来る前に、その映像が「勝手に消えてしまわないように」、その粘土の異様な形相を詳しくスケッチしておきました。

 そのスケッチは、今でも手元にあります。それでも、何回も見る気になれないほど、恐ろしい形相なので、メモを手にする時も寒気がするのです。この異様さからは、「怨念、怨恨、呪い、化物、悪霊」といった言葉以外、思い浮かびません。

 この怪奇なムービーが撮影されてからは、「何故だか分からないが、人間ではない、すなわち怨霊のようなモノが家の中に入り込んで来ている」と、私は漠然と感じるようになりました。

 しかし、確固とした確信には至っていなかったために、それを家族の誰にも言葉として表現しようとも思ってはいませんでした。

 もう午前4時半ほどになっていました。

 私は、眠れないまま、仕方なく、台所のテーブルに腰掛け、5月25日の夜中に起きた事柄を、まとめてメモに書き出しました。母が、朝、父に報告する際に、「メモにしてくれたら、分かりやすく話せるから」と私に頼んだためでした。

 私は、「就寝前の午前1時11分から41分にかけて、通常の状況を11枚、デジカメで撮影。モデムの右に金属板を置いたが、コードは3時半頃、引き抜かれて、金属板の上に置かれる。その証拠写真を撮影。それから午前3時56分、枕元に置いていたデジカメに変な映像が撮影されていた」などなど、ほんの3時間~4時間の間に起きた事柄を、整理して書いていました。

 このメモを書き終わった後、お腹が空いてきました。もう午前5時40分でした。何か少し食べようと、冷蔵庫からベーコンを取り出しました。そして、おはしを取ろうと、食器戸棚を振り向いた時でした。

 いつの間にか、電子レンジ左横にある、3段の半透明な整理ケースの真ん中の引き出しが、手前いっぱいに引き出された状態になっていたのです。

 この引出しは、爪切りや安定剤などの、ちょっとした薬を入れる小物入れとして使っているものです。私は、寝る前には、この整理ケースの引き出しがきちんと閉まっている状態を、デジカメで撮影していました。

 私がメモを書こうと、台所に来た時、整理ケースは異常ありませんでした。誰も、引出しを思い切り手前に引き出したまま、放っておいたりはしていないのです。

 だから、私がメモを書いている、午前4時半から5時40分の間に、また「誰か」が、私のすぐ背後で、整理ケースを、今にも外れそうなほど、ギリギリに手前に引き出していたのです。

 もう「玄関の灯りが勝手につく」といった異変が始まって、10日目でした。
 5月19日頃、つまり異変が始まってまだ3日目の時点で、「この現象は続くだろう」と妙な予感がした通り、その現象は留まることなく、いよいよ頻繁になっていき、ついには私の背後に迫って来たのだ―

 私は整理ケースを背に、テーブルに座ることが怖くなり、いっぱいに引き出された引出しを、離れた所から、まるで物の怪を見るかのように、恐る恐る見つめていました。(To be continued......)

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