2010年5月5日水曜日

第4章―現象の乱舞―2―飛び交う小物:part3―持ち上げられるパジャマ

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 扇風機は、風を送る向きとは全く別方向の、整理タンスの方向を向いていました。

 物が飛ぶことには、その時は一瞬ギクッとしますが、数回そんな経験を重ねると、不思議と慣れてしまうのです。何も好んでこんな経験をしているわけではないのは当然であるものの、当時の私達家族にとって、「恐怖への耐性」ができたことは、「不幸中の幸い」としか言いようがありませんでした。

 それでもなお、この扇風機の一件は、私を救い難い恐怖の奈落の底へと付き落としました。

 小物が飛ぶことを、既に経験しているのなら、扇風機が独りでに角度を変えたことぐらい、もう慣れっこになってしまうんじゃないのか―

 論理的に考えると、この件も、一連の現象の一部に過ぎないように思われます。

 しかし、超常現象のさなかにおいては、まず物事を論理的に捉えることは不可能です。現実の理解の範疇を超えた奇怪な出来事を目前にして暮らすことが「日常」となった場合には―

 あることは、いつもの事として、何とかやり過ごせるが、また違ったことが起きると、足元がすくんでしまう。こうした激烈な感情の起伏が、目の前の現象に対して湧き起こるのは、もうどうしようもありません。

 扇風機が「カタカタカタッ」(ユタカには「ギギギギッ」と聞こえた)と音を立て、自ら方向転換をした。このことは、私にとって、「新たな怪奇現象」でした。

 まるで、会社などの新人研修のように、最初は何でも難しく、自分にはこなせないような仕事に思われていたのが、後になってみると「なぜあんな簡単なことを大変に感じていたんだろう」と笑う日も来るように、この超常現象の「日常」においては、「全く予想外の現象」を、とてつもなく「怪奇かつ異怖」であると捉えることが、日々積み重なります。

 しかし、それらは後になってみると、「あれはほんの序の口だった。まだまだ本番が待ち構えていたんだ」と思われることに過ぎない「怪奇現象の日常の一部」となってしまうことが、6月から8月にかけて、理解できました。なぜなら、想像もつかない異常な現象が2008年の夏真っ盛りに、私達家族を襲ったからでした。

 そして、この5月31日から激化した「物が飛ぶ」現象は、日が経つにつれて、「ある一定の時間だけ、数分置きに起こる」ということが分かって来ました。それでも、そんなことは、31日の昼間の時点では把握できなかったのです。

 扇風機が向きを変えたのはこの日の午後、PM12:40 でした。その後、PM12:57頃、急にペンのような物が食卓についていた私の背後で「カツーン!」と落ちる音がしました。

 振り向くと、母が愛用している花柄のペンが、リビングの中央に落ちていました。リビングの中央には、もう一台、寝室と同じような、白い、やや大きめの扇風機を置いていましたが、ペンの落ちた場所は、その扇風機のコードのそばでした。

 どこにそのペンを置いてあったのかは分かりません。しかし、人は、小物を、すぐに落ちたり、転がったりする場所には普通置きません。ペン立てがあるならそこに、テーブルならそこに置きます。

 よく考えてみると、この花柄のペンは、母が、使い勝手が良いように、食卓背後の電子レンジ左横の、整理ケースの真ん中の引き出しに入れていたものでした。

 その整理ケースは、10日ほど前、明け方、やはり真ん中の引き出しが、いつの間にか大きく前に引っ張り出されていた、例のケースでした。そのケースは、今回はきちんと閉まったままでした。そうなると、ケースが閉められた状態で、その中から花柄のペンが、4m は飛び、転がったことになります。

 それから3分後、PM1:00頃のことでした。その時には、息子は起きてきて、遅い朝食の食卓につこうとしていました。すると、また、すぐそばで、何かが落ちる音がしました。

 何が落ちたのか、テーブルの周囲を見回すと、以前も飛んだ口内炎の薬「デンタルピルクリーム」が、飼っている亀の水槽の横に落ちていたのです。

 この口内炎の薬は、いつもは、食卓の壁際、コンビニで買った折り畳み式ポータブルチェスの箱のそばに置いてありました。一方、亀の水槽は、食卓とは相対するテレビボードの右横にある、ピアノのキーボードの右端に置いてあります。

 チェスの箱から、亀の水槽までは、4.5m は離れています。その距離を、私達家族が気がつかないうちに、薬が宙を飛んだわけです。

 更に、その26分後、私は日頃から書き溜めた「怪奇現象」に関するメモをクリップで止めて、家族の寝室にしてある子供部屋のタンスの上に置きに行きました。

 すると、リビングで、再び、ペンのような固い物が、「カツーン!」と落ちて転がる音がしました。何が落ちたのかと、リビングに引き返し、探してみると、寝室のふすまの裏に置いてあるカシオの電子ピアノの椅子の下に、黒いボールペンが落ちていました。

 このペンも、落ちる前は、食卓か、パソコンデスクの上にあった、と覚えています。そこからピアノの椅子の下までは、約3m~4m 離れています。この時の、ペンが落ちる音は、激しく、腹を立てて床に叩きつけるような勢いがありました。

 私は今気がついたのですが、亀の水槽そばに薬が転がった時も、このボールペンが投げ飛ばされた時も、「飛び方」が今までのパターンと異なり、真っ直ぐではなく、斜めの方向に飛んでいた、ということです。

 つまり、徐々に「現象」の勢いも、飛ぶ角度も多様になってきたということであり、それはすなわち、「現象がエスカレートしてきた」証だったのではないでしょうか。

 またそれから約30分後の PM1:55 頃、ユタカは吐き気がする、と言って、また布団にもぐりこんでしまいました。

 この頃は、13歳と4カ月、身長は伸びていましたが、体重が激減し、ほんの34キロほどしかなく、痩せて痛々しいほどに手足が棒のように細くなっていました。食欲も湧かず、すぐに胸やけが起こるのです。

 以前、この痩せ方をスクールカウンセラーの先生に報告すると、とても驚かれました。

 「あまりにも痩せていると、内臓や脳に障害が起こる事があるんです。内科でせめて点滴でも駄目でしょうか」とおっしゃるのですが、私は「痩せ過ぎて、血管に点滴の針が入らないんです」と答えました。現在のところ、障害は起きてはいない様子でしたが、「このまま痩せて行ったらどうなるんだろう」と不安でたまりませんでした。

 外出もせず、息子がすることは、大半はDS のゲームでした。それでも、たまにパソコンで、私と『ハリー・ポッター』シリーズのDVD を見て笑うと、ほっとしたものです。カウンセラーの先生は、「不登校の子供さんには、『ハリー・ポッター』は人気が高いんですよ」と言われました。

 私は、あの映画は魔法使いの映画、魔法学校の作品だから、不本意にもいじめなどで登校できなくなった子供たちの、夢と理想をつかの間実現してくれる映画なのだろうと思い、それが却って辛くなったものでした。

 息子は布団に入ると、大抵、壁際を向いて寝転びますが、その時、何か重い物が「パサッ」と倒れる音がしました。変に思い、寝室に入ると、すぐさま、私の枕元に置いていた扇風機が、私の布団の方へと倒れているのが目に入りました。

 これも異様な出来事でした。

 息子が寝室に入る際、真っ直ぐに布団にもぐりこんだ様子は私が見ていました。もし息子が扇風機にぶつかって、それが倒れるとしても、そんな状況は有り得ません。

 私の枕元の扇風機は、息子の布団からは2mは離れた、整理タンスの前に置いてありました。こうなると、再び、扇風機が勝手に動いて、私の布団へ倒れたことになります。

 私は、扇風機がほとほと嫌になり、リビングの、背の高い方の扇風機のそばに並べておきました。

 この扇風機や、ペンが飛ぶ事件に対し、私は、以前、玄関の灯りが独りでについた時のように、「何者か」の存在を強く感じました。明らかに、訳は分からないが、「誰か」が故意に、物を動かしているのだ、それも悪戯心や、悪意、敵意を持って。

 この5月31日の午後は、それ以降、記録がありません。何か小さいことがあったのかも知れませんが、私のメモには一切記されていませんでした。しかし、メモにばかり書くのも大変なので、6月1日から、ノートに表を作り、書くようになりました。

 31日の午後、母は父に、「いきなり物が夜中も昼間も飛ぶようになった」と連絡しました。

 父は非常に心配して、「明日の1日にまた泊まりに来るから。それで、二人でマンションの管理人さんに相談しよう」と言いました。母は、「他人に言っても、信じてくれるかしら」と不安げでしたが、父は、「この際、誰かに相談しなけりゃ、何も進展しないじゃないか」と言い、断固として決意を曲げませんでした。

 そして、6月1日を迎えました。

 この日も、まだ夜中は私、息子、そして母の3人きりです。夜中じゅう、ほぼ1,2分から5分置きに物が飛びましたが、この晩、私が最も唖然となったのは、パジャマでした。

 パジャマがどうしたのかというと、息子と母の布団の間に置かれていた子供用のパジャマが、私の目の前で、まるでマジックのように、クイクイと「透明な指先」でつままれたように上下に動き、そして突然、ベランダの前を覆うカーテンの右隅へ「ビュッ」と飛んだのです。

 今までは、「物が飛ぶ」現象を目の当たりにしたことは一切ありませんでした。これが、私が「物が飛ぶ瞬間」を目撃した最初の経験となりました。(To be continued……) 

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