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6月になって、小物が飛ぶ頻度が異常に多くなり、時間の間隔も短くなってきていることから、私達は、「刃物が飛んで来て怪我すると怖い」と思うようになりました。
そこで、飛んで来て体に当たると危険な、カッターナイフや電池、磁石などはまとめてセロテープでぐるぐる巻きにして、小さなポーチに入れ、子供部屋の隣にある衣装箪笥の右扉奥に「分からないように」他の衣服などの下へと押し込みました。
「分からないように」―と言うのは、「物を飛ばす正体不明の者にバレないように」というつもりでした。
台所の肉切包丁、刺身包丁、鋏なども、赤い贈答品の空箱に入れて、毎晩流しの下の奥へと置くようになりました。
それでも、母とこんな会話を交わしたことを覚えています。
「こんな所にあちこち隠したって、『相手』には分かっているんだろうね。こうして今、話していることも聞いているんじゃない?どこかから......」
「相手」と言うのは、もちろん「物を飛ばす正体不明の者」であり、私達が2008年6月初旬、最も恐れていた、目に見えぬ「モノ」でした。
こんな会話を他人が聞いたら、きっと私達の頭がどうかしてしまったのだ、と変に思ったことでしょう。しかし、私達家族の間で、こうした会話を交わすのは、奇怪なことに、ごく当然のこととなっており、自然な「恐れ」という感情から生じていたことだったのです。
6月6日の夜半になりました。
AM2:45~55にかけて、しばらく途絶えていた、「コツコツ」という壁の音がまた始まりました。
この頃には、以前のようなメモ用紙ではなく、ノートに表を作り、左から、「月・日」「時刻」「最初(小物が)あった場所」「落ちた場所」を簡単にメモできるようにし、右端に、多めにスペースを取り、「備考」として、特記事項となるべき異変があれば、なるべく詳しく書くようにしていました。
この「再開した壁の音」に関し、私は「備考欄」に、以下のように書き残していました。
「午前2時45分、ユタカが安定剤で眠くなり、ゲームを止めて寝ようとし、父がパソコンを止めて(子供部屋隣室の)マッサージチェアで休もうとした時……
ユタカ『大人の気配、すごくする。地面の中、いや、床の下に一人、壁の中にもう一人いるよ』→ 直後、例のトントントン、が始まる」
「ユタカ『今、頭の中に<俺の番>という、低い男の声が浮かんだ』→ その直後、物が飛び始める」
この壁の音は、実際、聞こえている音なのか、それとも私達家族の空耳なのか、それを確認しようと、父は買ったばかりの真新しいテープレコーダーを用意して来ていました。
実際、壁の音は、子供部屋からは、父が休む隣室の、マッサージチェアを置いてあるすぐ壁際から響いてきます。
録音し、テープを再生すると、しっかりと、「トントン、コンコンコン……」という音が入っていました。その音は、5月の末近くに聞いた音よりも、強く響く音でした。まるで何かを主張しているかのように感じたのです。
また、私が洗面所や廊下、ベランダで人の気配を感じることはありましたが、ユタカのように、壁や床の中に人がいる気配などは分かりませんでした。
しかも、<俺の番>との声が息子の頭に浮かんだ、というのはどういうことなのか、と戸惑いました。
しかし、状況から考えて、壁の音を叩く者が「床の下と壁の中」に2人、しかも大人の男がいて、まずは一人の男が壁を叩き、次に別の男が<今度は俺の番だ>と相手に言い、叩くのを交替した、ということなのでしょう。
実際、ユタカが<俺の番>との声が頭に浮かんだ、と言った直後、「トントントン」の叩き方はより強く、速くなったのです。
また、<俺の番>という言葉は、<今度は俺が壁を叩いて、物を飛ばしてやる>という意味だったのかも知れません。
息子がその言葉を「頭で聞いた」直後、1分から10分の間隔で、物が次々と投げ飛ばされることが急激に始まったのです。
AM2:55 には、私の枕元にあった文月今日子さんの本が投げ飛ばされ、「バーン!」と今までにないほどの激しい音を立てて、リビングの方へと叩きつけられました。
この本が飛ぶ時も、前夜のように、「物が浮上する」という奇怪な光景を目にしました。
いや、単に浮上するだけでなく、本は、「宙に浮いた後、そのまま移動」したのです。
まず、本は、私の枕元からゆっくり浮上し、すーっとふすまの方へと空中を移動し、そしてリビングへと向きを変えて、リビングへと「ビュッ」と飛ぶのを、私と子供が目撃したのです。
ユタカは眠くて、眼をうっすら開けていたら、本の移動が視界に入った、と言いました。
私は、投げ飛ばされた本が、どこに落ちたのか、リビングへ探しに行きました。
すると、本のカバーはリビングの床に、本の本体は、ふすまから4m は離れたパソコンデスク下の、ワープロの裏にまで飛ばされていました。カバーも、本も一部が折れ曲がり、くしゃくしゃになっていました。
この時期、ワープロがパソコンデスクの下にあったというのは、まだ「モデムのコンセントが勝手に引き抜かれるのではないか」との恐れがあったため、ワープロを防波堤にしていたのだと思います。
そして、私がリビングにいる間、寝室にいた息子は不思議な影を、ふすまに見ていました。
彼は、私の布団の上を、枕元から真っ直ぐ歩く、性別不明の大人の大きな影が、床の上に置いたスタンドの照明で照らされた、寝室内側のふすまに映るのを目撃していた、と言うのです。
察するに、息子の頭に浮かんだ<今度は俺の番>との低い声の後、物が急激に飛び始めたこと自体、不思議なことであるし、そしてふすまに映った歩く人影の正体こそ、私達が恐れている「モノ」であったのでしょう。
物はその後も数分置きに相次いで飛びました。
AM3:00 には、息子の枕の左に置いていた、古い銀色のDS が、2m 先の、寝ている母の左足の甲にビュッと飛び、当たりました。
母は、顔をしかめ、「あっ痛っ!」と声を立てました。
電池が息子の背に当たり、今度は電池よりも重いDS が母の足に当たり、二人とも「痛い」と言うほどだったので、私は「飛ぶ物の重さや大きさが以前よりも違ってきた」と怖ろしく、身の危険を感じました。
ただ、重い物が飛んだのは、この晩は、DS のみでした。
AM3:10 には、ユタカの枕の左、ハンカチに包んであった8cm四方の保冷材が、私の布団の足元に飛びました。
次にはこのハンカチが問題でした。AM3:12 から3:15 のほんの3分間の間、このハンカチは、3回も飛び交ったのです。
最初は母の右腕の上に、ぽーんと飛んで来たので、母が一度、息子の枕元に戻しました。すると、その1分後、再び母の右腕に飛びました。母は、「いやねえ」と言いながら、再度、息子の枕元に戻しました。
その2分後、このハンカチは、今度は、息子の顔の上へと飛び、パサッと落ちたのです。
ユタカはウトウトしていましたが、急にハンカチが顔にかぶさったので、「うわっ!」と声を上げ、目を覚まし、上半身を起こしてしまいました。
AM3:30頃には、子供の机の上に置いていたプロアクの箱が、やはりリビングの床へと飛んで行きました。
私は喉が渇いたので、リビングを通り、台所で水を飲んでいました。AM3:50頃でした。ユタカは、ハンカチのために眠気が覚めてしまい、壁にもたれていました。
ところが、また彼が、「わぁっ!」と叫んだので、私は驚いて、すぐリビングから子供の方へと行きました。
すると、何と、私が使っていたタオルケットが宙に浮いていたのです。
そのタオルケットは、私達の目の前で、私の布団隣の母の布団の上に落ちました。
最初はパジャマ、次にはティッシュボックス、そしてタオルケットが宙に浮いたのです。
このティッシュボックスと、タオルケットには、その夏中、悩まされることになったのですが、もちろん、6月6日のこの時点では、そんなことは思いも寄りませんでした。(To be continued……)
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