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6月7日から8日にかけての記録も、ノートに残されてありますが、奇妙な出来事の起こる時刻はすべて、この2日間、夜中の午前0時過ぎでした。ということは、昼間は特記すべき事柄はなかったのでしょう。
7日の晩は、AM0:54~4:00 に至るまでの約3時間に渡って現象が起きたことが記されてあります。この晩も「数秒~1分おき」と書かれています。それほど目まぐるしく、小物が飛んだことが分かります。
始まりは、AM0:54 、息子が「小さな女の子」の気配を室内に感じた瞬間でした。
途端に、学習机の一番上の引き出しから、赤いキャップのボンド、2分後には、やはり引き出しに入っていたレゴの小さい、子供の小指ほどの大きさの人形が、リビングへとビュッと飛び、「バシッ」と床に投げつけられました。
引き出しは閉めてあるのに、中に入っている物が勝手に飛び出し、6m も離れた床へと転がるのです。
また、AM2:15~AM2:23 の間、今度は洗面所に置いていた父と母の歯ブラシ、それに父の黄色いキャップの薬が、それぞれリビングへと飛び、静まり返った深夜に「カーン!」と大きな音をたてました。
歯ブラシや3cm ほどの小物でも、誰も活動していない室内へと投げつけられると、意外なほど音が響き渡ります。
それが、「誰も触れてもいないのに」勝手に飛んで来るために、その異様さは私達の神経を恐怖で痛め、緊張感で疲弊させるのです。
AM2:22頃、ユタカは口を洗っていなかったことを思い出し、洗面所で、スイッチ辺りの壁にもたれて、目をつぶって歯を磨いていました。
しかし、途中で「あれっ?」と声を上げました。そして口をゆすぎ、慌てて寝室の私の所に駆け込んできましたが、その彼を追うように、父の黄色いキャップの薬がリビングへと吹っ飛んで来たのです。
「どうしたの?『あれっ』て言ったりして」
「僕、眠いから薄眼を開けながら口洗ってたんだ。そしたら、歯ブラシの上の整理棚に置いてたおじいちゃんの薬が、急に洗面台に転がったんだ。僕がそれを拾おうとしたら、薬が、生き物みたいに洗面台を這い上がっていくんだもの。だから『あれっ?』って声出したんだよ。僕が口をゆすいだら、今度はその薬が、僕の目の前でふっと浮いて、リビングの方に角度を変えるから、怖くなって逃げたんだ」
6月になり、物が飛び始めたかと思うと、その現象は、「正体」を見破って欲しいかのように、箱やパジャマやハンカチ、本やタオルケット、薬などを、「飛ぶ直前は、実はこうして宙に浮上し、角度を変えていたのだ」と、私の目の前で、堂々と「からくり」を披露するようになってきたのでした。
AM2:23 以降、「もう寝よう」と皆で布団に横になった途端、また壁を叩く音が「コンコンコン!コン……ココン!コンコン!」と始まりました。
その音は、AM4:00 頃まで、1時間半も続きました。
そして、その間、やはり学習机の引き出しから、スーパーにある「百円ガチャガチャ」で買った、小さなおもちゃの入った丸いカプセルや、クリスマスツリーのリンゴの飾り、別のレゴの人形などが、寝室の入り口やリビング床へと次々と飛んで行っては、「ゴーン!」「ガン!」と激しい音を立てるのでした。
またその間、壁の音は相変わらず続いていました。
壁に私が耳を押しあてると、音は、何と壁の中から聞こえて来るのです。ユタカは「壁の中にまた人がいる気配がするね」と言いました。
AM4:00 頃でした。ユタカが「壁の中の人の気配が強い感じ」と言った後、それまでやや弱かった壁の音が、徐々に速度や強さが増して行きました。
私達は、早速、その音をテープレコーダーで録音しました。しかし、録音を確認していると、カチッと音がし、レコーダーは勝手に停止してしまいました。
この晩で、最も驚くべき異変は、「枕元のスタンドが動き回った」ということでした。
AM3:42 、母の枕元のスタンドが、いきなり独りでに「カタン」と倒れてしまったので、「また勝手に動いた」と思いながら、元通り、立てておいたのです。
物が飛んだり、浮上したりを何回も見るうち、このようにスタンドが勝手に倒れても、「あっ」と思っても、さほど怖くは感じなかったのだと思います。
そのスタンドの灯りはつけたままにしていましたが、AM4:17~30 にかけて、これまでになかった現象に、私達家族は驚愕しました。
スタンドは、最初、母の枕元を照らしていましたが、急に私達の見ている方角へと90度、生きているかのように角度をゆっくりと変え、またカーテンの方へと向いたり、前後にすっすっと踊るように動いた後、先ほどのように、「カタン!」と倒れ、動かなくなりました。
この様子を私と息子、両親の4人で目撃したのです。
私は、AM3:42 、スタンドが勝手に倒れた時から、恐怖心は吹き飛び、奇妙なことに、「今度、独りでに動いたら、絶対、携帯のムービーで録画しよう」と考えていました。
その思いを見透かされたように、スタンドは、私の目の前で、くるくると踊って見せたのです。私は、その不可思議な光景を、携帯で撮影していました。
そして、このスタンドが倒れた直後、ユタカの頭に、また不思議な声が浮かんだ、ということです。
<終わり。もう他の所に行く>という、中性的な声だ、と彼は言いました。
それは、どんな風に浮かぶのかと私が尋ねると、息子は「頭の中で、声が聞こえる感じなんだ」と答えました。
この7日の明け方、壁の音も止み、布団で休む前に、私は、再度、携帯のムービーフォルダを確認しました。この時は、録画したスタンドの動画は残っていました。
しかし、8日の夜半、AM2:30 、念のために、携帯をチェックしたところ、スタンドの動画は消去されていたのです。スタンドだけではなく、5月の中旬以降にデジカメに「誰か」が撮影した、気味の悪い粘土状の顔の映ったムービーも消去されていました。
携帯やデジカメのムービーは、一旦撮影した後、保存していたのです。故意に、手動で消去しない限り、データが消えることはないはずなのです。
これも、「物を飛ばし、宙に浮かし、スタンドを踊らせ、ユタカの頭に響いた声の主」がしたことなのか、と私は直感しました。
父には、この日には、既に「一連の現象の原因」を探る計画があったようでした。
それは、家を離れて、4人でどこかへ旅行しよう、ということでした。何か得体の知れない「モノ」が、人に憑いているのか、家に憑いているのかを確認したい、と父は言いました。
もし旅行先で何も起きなかったら、奇妙な現象の原因は、今住んでいる家にある。そうなれば、転居すればいい、と父は考えたのです。
それでも、旅館でも怪現象が起きたなら、その時はどうしよう―新たな不安が、私を再び襲いました。(To be continued……)
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