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2007年の8月中旬のことでした。どう考えても、不思議なことが我が家で起きました。
当時12歳で、中学1年になったばかりの息子は「怖い話」が大好きだというので、ネットのアマゾンで、有名な少女漫画家、山岸涼子さんの単行本を3冊買いました。
『天人唐草(てんにんからくさ)』・『神隠し』、それに極めつけは『私の人形はよい人形』でした。この『私の人形~』に関するエピソードをお話しましょう。
8月の暑い最中でした。それらの単行本は、3冊とも、息子の学習机の上に並べて立ててありました。
私は、息子の部屋に一緒に布団を並べて寝ていたのですが、ある朝、気がつくと、『私の人形』だけが、表紙を上にして、私の枕元に置かれていました。
その表紙は、昔から伝わる古い伝統的なおかっぱの、立派な日本人形を細かに描いた絵を中心に、背景は、濃い赤一色。人形の絵を見ているだけで、何となく薄気味悪い気分になったものです。
それが、いきなり枕元にあったので、私は驚いて、「ねえ、これ、お母さんの枕元にわざと置いたの?」と息子に訊きました。息子は、知らないと言いました。私は、それきり、「机の上の本が落ちたんだろう」と、学習机の本棚に戻しておきました。
それから数日後、夕食時に、息子の部屋に入り、冷房をつけ、そして、何の気なしに、学習机の上に目をやりました。途端に、私は「うわっ!」と声を立てました。
その『私の人形』だけが、本棚から抜き取られ、やはり表紙を上にして、机の上に、無造作に置かれていたからです。まるで、誰かがその本を引っ張り出したように―
普通、ほかの本と一緒に立ててある本を抜き取った場合、その分、空間が空くため、ほかの本は斜めに傾くはずなのです。しかし、そうした痕跡は一切なく、ほかの本は、数冊もあるのに、じっと真っ直ぐに立ったままでした。
「どうして、この本だけが、枕元にあったり、本棚からきれいに抜き取られるんだろう?枕元は、偶然、本が落ちたと考えられるけれど、誰もいない部屋で、なぜこの本だけが抜き取られるの?」
その時、私には、「なぜこんなことが起きるのか」という疑問に対する論理的な、合理的な答えは浮かばず、ただただ、不思議で怖いだけでした。そこで、「今度は絶対に本が引き抜かれないように」と手段を講ずることにしました。
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